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金融危機中に見る中国人の消費変化

金融危機中に見る中国人の消費変化

 昨年9月のリーマンショックをきっかけに、世界的な金融危機が広がっていった。アメリカをはじめ、ヨーロッパ各国、日本など、世界の先進国は次々と金融機関の経営破綻、失業率の上昇、消費者の消費意欲低下などの危機的状態に陥った。もちろん、このような世界規模の金融危機は、高度経済成長を続ける中国も免れられない。
 今回の金融危機での中国消費者への影響は、2009年のMcKinseyによる中国消費者に対する調査レポートから分かる。2008年3月の中国消費者自信指数※1は94.3%に対して、2009年3月には86.0%まで落ちており、最近5年間の最低水準だった。特に低収入層及び深圳など輸出入に依存している地域の消費者が受けた影響は最も大きかった。しかし、GDPの増加及び中国政府の景気刺激策(6,027億米ドル)のおかげで、消費者自信指数はリーマンショック後、今年5月(86.7%)に初めて上がった。その数値の変化は中国消費が除々に回復し、従来の消費に戻っていることを示している。
 金融危機後の中国市場は、まだ完全ではないが回復の兆しは明らかだ。そして、今回の金融危機を経験した中国消費者の消費行動が少し変わったことも事実である。
その変化をいくつかの点でまとめてみた。
 
1)成熟してきた消費者
 過去の経験から鑑みると、中国の回復力は早い。※2今回も同様である。アメリカなど先進国と同様に消費の低下を体験したあと、わずか約1年でリーマンショック前の2008年3月ごろの消費水準に戻っている。さらに、2009年6月の消費総額は前年度比15%増、自動車の消費額48%増、住宅消費は54%増となっている。※3
 加えて、消費者たちはより付加価値の高いものを求めるようになった。例えば、シャンプー市場から見ると、以前は、P&G、ユニリーバなど大手5社が、高い市場シェアを持っていたが、2008年まで5社の市場シェアは2001年の58%から46%に落ちている。その理由はより多くの消費者が、シャンプーの多様性を求めたためと考えられる。つまり、通常のうるおいやバサつきを防ぐ効果のものだけではなく、育毛促進、頭皮ケアなど様々な効果のあるシャンプーを要求するようになったのである。そうした消費者のニーズに適したシャンプーを大手以外のメーカー提供し、消費者もそれを購入する傾向が高くなったのである。
また、最近はカルシウムが多く含まれているチョコレートがブームになっている。中国の消費者はチョコレートに対しても、単に甘さや美味しさだけではなく、付加価値にも敏感に反応している様子が伺える。

2)ブランドからクオリティへ、スマートな消費に
 2009年“山寨”(shanzhai)※4とう言葉が中国では流行っている。“山寨文化”は中国中央テレビ局CCTVでも取り上げられ、簡単にいうと、昔の“海賊版”のことである。しかし、昔と比べ異なったのは今の“山寨”商品は外観だけではなく、機能や内部の技術レベルも正規品と差が少なくなっている点である。むしろそれ以上の製品を作り上げることもある。その中で“山寨携帯電話”の消費量は2006年の1,700万台から2008年の6,200万台に増えてきた。正規品の半分以下の値段で正規品とほぼ同じくらいの機能を持っているのは“山寨品”の魅力である。
“山寨現象”を声援するというわけではないが、McKinseyの調査結果より、近年、消費者のブランド品に対するロイヤリティが、低下していることがわかった。より多くの消費者は有名ブランドよりもっと費用対効果が良く、そして付加価値の高い商品を求めている。この現象は何年も前から起きているが、今回の金融危機のため、さらに多くの消費者に影響を与えた。商品の実用価値を重視する消費者は2008年の17%から2009年の27%に上ってきた。一方、液晶テレビを購入する際に、ブランドを重視する消費者は2007年の75%から2009年の63%に下がった。
 さらに、以前も紹介したように、より安い値段で良いものを手に入れるため、ネット上で情報収集したうえで購入を検討する消費者は増えている。商品口コミサイトへの訪問数は2008年と比べ50%増となっており※5、特に、過去1年間に、ネットで調べてから購入した消費者の中で45才~64才の方は10.6%から13.2%増加している。この傾向は今後ますます増加するのではないかと予測する。

3)もっと便宜な購入ルートへ
 金融危機以降、多くの消費者はより安い購入ルートを選んでいる。インターネットの普及とともに、インターネットショップ、小売ショップなどの購入が増えている。その反面、百貨店、デパートなどでの消費離れ現象が起きている。今回McKinseyの調査報告による、被調査者の3/4は2009年にインターネットで最新の携帯電話を購入した。この数値は2008年と比べ、倍以上増加した。そのほかに、化粧品やベビー用品などの購入においでインターネットショップなどを選ぶ消費者は2008年の73%から2009年の88%に増加した。

 今回の金融危機は中国の消費者にとっては“短い悪夢”だったとは言え、その中から中国消費者が得たのは、経験と知恵である。よりスマートになった中国消費者のニーズはますます多様化するであろう。また、それこそが、中国市場成長の大きな原動力になると考える。一方、今まで企業の目を引いてきた30代~40代の消費層のほかに、これからの中高年市場も静かに動き出している。


※1 日本語で“消費者信頼感指数”のこと。消費者の意識調査を行い指数化したもの。
※2 2003年SARSの時、消費者自信指数はわずか半年で最低の86から95の高水準に戻った。
※3  McKinsey2009年中国消費者調査レポートによる
※4 香港から流れてきた言葉である。もともとは小規模の工場、製造所などのことを指している。そこから出た商品は“山寨品”という。いわゆる非正規品のことである。
※5  MyMetrix媒体傾向調査2009年データ

(執筆:アウンコンサルティング株式会社)

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